
養育費の取り決めをしたら、その取り決めを公正証書にするのが鉄則です。
公正証書とは、簡単に言えば、法務局管轄の公証役場にいる公証人が作成し、ある人の権利義務を記した公文書です。
公証人は公務員ですから、その証明力は強いことがうかがえます。
「公正証書」とは、法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。 公文書ですから高い証明力があるうえ、債務者が金銭債務の支払を怠ると、裁判所の判決などを待たないで直ちに強制執行手続きに移ることができます。 引用 日本公証人連合会HPより
公正証書を作ることで、
- 裁判になった時に、文書が証拠になる
- 強制執行の手続きが早くできる
というメリットがあります。
ここでは、弁護士に依頼せずにする養育費に関連した公正証書の書き方、取り決めに関してのお話です。わたしは離婚時にたくさん調べて自分で公正証書を作りましたので、参考にしてみてください。
もくじ
自分でやる公正証書作成の手順
- 養育費や金銭関係で約束してほしいことをリストアップ
- 現在と未来の子供にかかる費用を、どのように負担するのかを相手と交渉する。
- 約束の内容が分かるメモを持って、公証役場に行き、
公証人に法的な義務として成立するかどうかを確認する。 - 取り決めのメモを元に執行承諾文言を入れた公正証書の作成を公証人に依頼。
- 公証役場に提出する資料(身分証明書)を確保しておく
- 後日、夫婦又は双方の弁護士が公証役場に行き、公正証書に間違いがないか確認して公正証書を受け取る。
公正証書の作成までの手続きの流れはこんな感じです。私の経験を元に順番に解説します。
一つの手順ごとにポイントも説明していきます。
自分でする公正証書作成の手順1 相手に約束してほしいことを中心にリストアップ
まず離婚が決定していることが前提ですが、相手に約束してほしいことをリストアップしていきます。
ポイントは、最初から遠慮しないこと。
兎に角、書きだすことが大事、あとで修正していけばいいので。
公正証書で相手に約束してほしいこと1 養育費の金額&期間
養育費の取り決めといっても、月づきの金額だけでは不十分です。ほかにも決めることがあります。
一般的な養育費の取り決め
- 養育費の金額
- 養育費の払い方(どの口座に入金するか)
- 養育費の支払い期限(高校まで?大学卒業まで?)
- 養育費の支払いが滞った時の利息
我が家の場合は、以上のほかに
- 6年制大学へ進学の場合は、養育費期限の延長すること
- 学資保険の保険料の支払いは折半すること
を公正証書に入れました。
子どもにどこまでお金をかけるのかは、人それぞれの価値観に左右されると思います。
- 現在の子供にかかる金銭的な事柄をリストアップする。
たとえば、学資保険、お稽古の費用など。 - 将来の子供にかかる金銭的な事柄をリストアップする。
たとえば、高校や大学進学費用、それに伴う制服代や塾代、成人式の費用など。
まずは、あなたがどんな教育をさせたいのか、子供が大きいのであれば子供の希望を書き出し、養育費取り決めの材料としましょう。
参考に国立大学の4年間の学費は300万円、私立大学なら500万円は必要です。
公正証書で相手に約束してほしいこと2 面会交渉について
養育費以外で、子ども関連の取り決めとして、面会交渉に関しても決めておくと後々ラクな場合もあります。
特に、父親が子どもとの面会を継続的に強く望んでいるや、祖父母も子どもと面会したい場合は、1か月あたりの面会回数や、祖父母との面会をどうするのかをきっちり決めると、離婚後に面会に関して悩むことがなくお勧めです。
ポイントは、「月1回程度」ではなく、「月○回」や「月☆回~★回まで」ときっちり決めるのがお勧め。
わたしは決めなかったので、子どもと祖父母との面会に関しては、決めるべきだったと後悔してます・・・。
公正証書で約束してほしいこと3 年金分割について
また、年金分割も取り決めしておくべきです。
年金分割とは、合意分割制度 離婚等をした場合に、以下の条件に該当したとき、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度です。
専業主婦や年収130万円未満のパート主婦は、自分名義で年金は支払っていません。(いわゆる3号被保険者。)
そのため、婚姻期間によっては、離婚の時に年金分割の手続きをしないと、国民年金の記録のみで、夫の厚生年金の記録が自分に反映されません。
厚生年金の記録がないと将来受け取る年金の額も変わってきますから、必ず年金分割の手続きを忘れないでください。
分かりやすいサイトがあったので参考サイトを載せておきますが、年金分割は、関係する法律が二つあったり、結婚した年で適応されなかったりで、ややこしいんですよね。
ポイントは、年金分割に関して必ず社会保険事務所に問い合わせてください。
(参考サイト多治見ききょう法律事務所これから離婚をする夫婦の年金分割の手順と注意点)
ようするに、お金が絡むことは、全て公正証書にしておくってことです。
公正証書にしておいた方がいいことは、この他にもマイホームが共有になっているなど資産の問題や、住宅ローンなどの負債の問題も取り決める必要があります。
離婚の時に決めるべきことは何か、分からなかったら公証役場や家庭裁判所でも相談できます。(有利に離婚する方法などは弁護士に相談。)
自分でする公正証書作成の手順2 養育費の具体的な金額や期間を相手と交渉する。
これまでは、自分の希望をリストアップしましたが、今度は相手と交渉して実際の養育費の金額などを決めていきます。ここがメンドクサイ。
相手が離婚を望んでいる場合はラクに交渉がすすみますが、
自分から離婚を申し出た場合は、そう簡単には行きません。
相手が交渉に応じない場合は家庭裁判所の調停を利用して、交渉の席につかせたり、調停を経て裁判によって離婚することになります。
ただ、調停も裁判も時間とお金がかかります。しかも、調停や裁判の開催は平日の17時まで。
相手の状況によっては、平日に調停に何度もいくならと、養育費に関する話し合いに応じてくれることがあるので、それをエサに。
また、公正証書作成の手数料を、相手方から先に預かると相手も真面目にやり取りしてくれます。
取り決めが出そろったら、相手方が後で取り決めにケチをつけたりされないように、メモでもいいのでお互いが合意しことをリストアップして、署名捺印をしてもらいます。
ポイントは、交渉する前に少なくても一度は、弁護士に相談してみること。
経験上、相手がゴネるところを封じる方法を教えてくれます。
また、相手の源泉徴収票や、相手の給料の振込口座の中身をできるだけコピーしておくこと。
それが難しい場合は、結婚している間に役所に行って、課税証明書を貰っておきましょう。
自分でする公正証書作成の手順3 取り決めが法的に問題がないか公証役場で聞く
日本では、原則、当事者が納得していれば、どんな約束でも自由にできます。
それは、離婚時の養育費やその他の約束に関して公正証書を作成する時も同じです。相手が良い!と言えば、慰謝料1億円だろうが、100億円だろうがいいんです。
しかし、法律に違反していること、倫理に反することは当事者がOkしていても約束として成立しません。
たとえば、「養育費が滞った場合の利息は、2000%」という約束は利息制限法又は出資法によって違法です。
他にも、将来子どもが養育費を払う元夫と同居することを条件に、養育費を払うなどと約束することもできません。
養育費は、子どもの扶養義務が根拠となり、常識的に考えても子ども抜きで話しているのに、子どもが成人したら養育費を払った側と同居する約束になってるなんて、困るでしょ。
つまり、常識的に考えて子ども権利を侵害しているものは、法律に照らすまでもなく、無効です。
それでも、法律的に有効な約束かどうか分からない場合もあります。その場合は、養育費取り決めの話し合いの段階で、公証役場に聞くと無料で教えてくれます。
自分で公正証書を作成する手順4 取り決めたメモを元に公正証書作成の依頼をする
取り決めが法的に問題がないのであれば、メモを基に公証人に公正証書作成の依頼をします。
ちなみに、私達が公正証書のひな形の形式で、取り決めを書く必要はないです。
たとえば、
夫●●●●(昭和○○年○月○日生まれ、以下、「甲」)と妻●●●●(昭和○○年○月○日生まれ、以下、「乙」)は、甲乙間の離婚について、以下のとおり離婚給付等契約を締結する。
(離婚の合意)
第1条
甲と乙は、協議離婚することに合意し、本公正証書作成後、各自離婚届に署名押印して乙において速やかに届出をする。
といった文章を自分で用意する必要はありません。
公正証書そのものは、公証役場で公証人が作ってくれるからです。
実際、わたしも、上のような公正証書のひな形のような書類は、用意してません。メンドクサイし。
なので、公正証書の書き方をマスターする必要はなく、双方が合意したことをメモしたものを持参すればOKです。
【自分でする公正証書作成の注意点】公正証書証書に「執行承諾文言」をつけること
執行承諾文言とは、金銭的な約束を守らない場合、直ちに強制執行(給料や財産を差し押さえること)を行うことを承諾する文章のことです。
たとえば、「甲は、本契約上の金銭債務〇〇を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨認諾した。」などの文章です。
この執行承諾文言が公正証書にないと、給料差し押さえなどの強制執行ができません。別途、手続きが必要になります。
給料の差押えをするためには,公正証書正本に,債務者が公正証書正本に記載された債務を履行しない場合は,直ちに強制執行に服する旨(これを「執行受諾文言」といいます。)が記載されていなければなりません。
引用 家庭裁判所 公正証書正本が手元にある方
そりゃーそうです。強制執行は国家が強制的に財産を使えなくさせる手続なので、簡単に強制執行できてしまったら、大変です。
なので、手続きが細かいのは仕方がないことです。
強制執行をすぐにするために、公正証書を作成する際には、執行承諾文言を入れるように公証人に頼んでください。
自分で公正証書を作成する手順5 公正証書を受け取る際に、必要な書類を集める
相談や公正証書の受け取りのために、少なくとも2回は公証役場に行くと思いますが、公正証書を作成する段階になると身分証明書が必要です。(場合によっては相談の段階でも必要です。)
1 当事者本人により公正証書を作成する場合
(1)当事者が個人の場合
- 印鑑証明書と実印
- 運転免許証と認印
- マイナンバーカードと認印
- 住民基本台帳カード(写真付き)と認印
- パスポート、身体障害者手帳又は在留カードと認印
①~⑤のうちいずれかをお持ちください。なお、公正証書の種類によっては、特定の資料に限定される場合もあります。
後述する印鑑証明書、代表者の資格証明書及び法人の登記簿謄本については、公正証書作成日から遡って3か月以内のものをお持ちください。
引用 日本公証人連合会 公正証書作成に必要な資料について
公正証書の種類や法律改正などにより、必要な書類が変更になることもあります。必ず公証役場に聞いてください。私の時は、印鑑証明が必要でした。
役所に行く用事をなるべく減らすために、離婚届や戸籍謄本と同時に印鑑証明などをもらうと楽です。
公正証書の作成を自分でやるか、弁護士に頼むかの分岐点は、自分の多忙さ
上の手順だけを見ると自分で公正証書を作ることは凄く大変そうですが、誰でもできると思います。
大変なのは養育費などの取り決めのために夫(妻)と交渉することと、
公正証書を発行する公証役場の開所日は平日、そして開所時間が17時までなので、平日に時間を作って公証役場に行くことだけです。
私は2回ほど相談と公正証書の受け取りのために公証役場に行きましたが、働いていて会社を休めないのであれば、弁護士に依頼するのがいいかも。
- 公正証書の書面作成から相手との交渉料金 200,000円~300,000円+実費(収入印紙代など)
公正証書の交渉から作成まで弁護士に丸投げだと20万円位は掛かります。
でも、公正証書の作成自体は、弁護士に依頼する価値はあるし、平日に休みが取れるのであれば、公正証書は自力でできるのでチャレンジしてみてください。
また、 厚生労働省委託事業 養育費相談支援センターでは、養育費についてのメール相談にも乗っています。
ぜひ活用してみてください。
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