現在日本では、離婚の際、母親又は父親のどちらか片方が親権を持つのが決まりです。
(単独親権)
ただ、海外では、単独親権ではなく共同親権という離婚後も父母双方が親権を持つ制度を採用している国が多く、日本でも共同親権を検討する動きが出てきました。
法務省は11月中旬、離婚した親と子の関係について検討する研究会を設置した。未成年の子を育てる親の権利や義務である「親権」がテーマだ。いまの民法は父と母が離婚すると、どちらか一方の親が子の親権を持つ「単独親権」を規定している。
米欧諸国のように離婚後も父母の両方が子の親権を持つ「共同親権」が必要かどうかを議論する。
引用 日本経済新聞 「共同親権」是非は? 離婚後の親子関係、法務省が議論
ここでは、単独親権、共同親権のメリットやデメリット、海外での動きなど共同親権についての情報をまとめています。
共同親権、単独親権の理解の助けになったら嬉しいです。
共同親権はいつ実現するか?2020年度中はムリ。
共同親権が導入されるという公式のアナウンスはいまだありません。議論をする段階に入っただけです。
ですが、産経新聞社2019年11月22日の報道によると、法務省は今後1年以上かけて海外での共同親権の運用状況について報告書をまとめる予定とのこと。
法務省は今年、世界24カ国の親権制度の実態を調査。今月には、選択制による共同親権の導入の是非など、離婚後の子供の養育について議論する研究会を発足させた。研究会は1年以上かけ報告書をまとめる。
2020年度中の動きはなさそうですが、公式なアナウンスがあり次第こちらで追記していきます。
すでに離婚している場合、共同親権を持てるのか?
基本的に法律は、過去にさかのぼって効力を及ぼすことはできません。(法の不遡及の原則)
法令は施行と同時にその効力を発揮するが、原則として将来に向かって適用され法令施行後の出来事に限り効力が及ぶのであり、過去の出来事には適用されない
引用 ウィキペディア 法の不遡及
ただし、過去の事例にも適応させる法律を制定することも可能なので、どうなるかは現時点では全く分かりません。
今後の政府の議論の中で必ず検討される論点だと思いますので、報道に注意するのが吉かな。
親権とは、子どもを守り、育てるための権利・義務
さて、親権について分かりやすく説明します。
親権とは、未成年の子を養育監護し、その財産を管理し、子を代理して法律行為をする権利・義務のことです。子の父母は、婚姻中には共同して親権を行使しますが、離婚の際には、父母のいずれか一方のみを親権者としなければなりません。未成年の子がいる場合には、その子の親権を決めなければ婚姻届は受理されません。
引用 アディーレ法律事務所 親権者とは?
親権は大きく3つに分かれます。
親権 | 身上監護権 | 子供の身の回りの世話、しつけ、教育をすること。 |
財産管理権 | 子供名義の預貯金などの財産を管理すること。 | |
法定代理権 | 子供が何らかの契約の当事者となる時に、子を代理して契約すること。 |
普段、親権を意識するようなことはあまりないですが、子供と同居して衣食住を揃え、教え導くのは、身上監護権です。
また、親が子供名義の預金通帳を預かると言った、子供の財産を親が管理するのは、財産権が根拠。
そして、子供が何らかの契約をするときに、親(親権者)の同意が必要なのは、子供には契約の当事者になることができず、親に法定代理権があるからです。
その他、中学受験などの受験にも、親の同意が必要ですし、日常生活でも学校が子供の家族と連絡を取るのも、全て親権者宛てになるのも親権が根拠です。
ちなみに、離婚の際にどちらか一方が親権をもつ決まりですが、親権を身上監護権とそれ以外に分けることもできます。
参考サイト 弁護士法人デイライト法律事務所
弁護士法人の上記サイトによると、親権を巡る争いを早く解決する手段として、親権を父母双方で分けて持つケースもあるそうです。
単独親権の問題点は、子供と交流がしにくい
弁護士がお話するように、親権は3つに分類され、身上監護権とその他の親権とで分けて父母が持つこともできます。
しかし、単独親権ですから、身上監護権とその他の親権とで父母で分けて持ったとしても、それぞれの権利を共有することはできません。
身上監護権を持つ親だけで、子供とどこに住むのかを決めることができ、子供と同居できます。
また、単独親権は、面会交流を否定するものではありませんが、別居親との面会交流について、同居親の許可が必要です。
その点、不当に別居親が面会交流を拒否されている場合、裁判所による調停や裁判官による審判手続きを利用して解決を図ることができます。
しかし、原則、相手の住所で裁判手続きをする必要があったり、解決までに時間を要するという問題があります。
相手側が遠方にいるなど金銭的な問題や裁判の長期化で、親であるにも関わらず子供に会えないという苦しみを抱えている親も少なからずいます。子供も同様でしょう。
中には、離婚準備中の親や切羽詰まった別居親が、子供を連れ去ってしまう事件や子供に会いたい気持ちを理由とする犯罪が起きています。
子供を訪ねて、義理の両親が住むマンション共用部分に侵入したとして、住居侵入罪に問われた日本在住のオーストラリア人男性が15日、東京地裁で懲役6カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
引用 BBCニュース 子供を訪ね住居侵入で起訴の男性有罪
ちなみに、外務省では国際離婚した人の子供の連れ去りに関する情報提供を行っています。
外務省(日本の中央当局)では,ハーグ条約に基づく返還援助申請及び面会交流援助申請の受付・審査や当事者間の連絡の仲介,外務省の費用負担による裁判外紛争解決手続(ADR)機関の紹介,弁護士紹介制度の案内,面会交流支援機関の紹介等の支援を行っています。
引用 外務省HPハーグ条約について
日本政府も子供の連れ去りについて放置しているわけではないのですね。
さらに、日本国外でDV被害に合われている人に向けて、各国での支援団体も外務省HPで紹介しています。
まずは、外務省のHpや日本大使館に相談してみてください。
>>外務省HP DV被害に合われている方へ
単独親権のメリットは、双方にとってラク。
単独親権のメリットは、親権を一人で持っていることから、受験する高校をどうするか?といった子供の事柄について、両親双方で相談して決める必要がないため楽なこと。(楽という表現がアレですが)
子供としても、親の許可を得るのに一人の親の許可で済むので説得する手間が省けます。
また、楽なのは親権のない親としても同様で、学校の呼び出し、三者面談、家庭訪問、PTA行事などに一切、対応せずに日常を送ることができます。
共同親権の問題点は、子供の負担
共同親権の問題点は、単独親権の時と違った負担が子供にかかる点です。
共同親権を実施している海外でも子供と同居するのは、一方の親のみですが、双方の親の間を頻繁に行き来する生活がみられます。
子供の中には、双方の親の元に行き来することに疲れてしまう子も。
ですから、共同親権を採用しているドイツ、アメリカ、イギリスでは、そういった子供のケア、親の相談窓口、支援機関があります。
また、海外の共同親権も、単独親権を排除するものではなく、状況によって単独親権になったり、20%ほどの親権の割合だったりと、個別に親権の運用が変わるのは重大な点です。
(つまり、現状、単独親権だけの状態から共同親権も選択できるよ!というわけです。)
(参考 ウィキペディア共同親権について)
共同親権のメリットは、離婚後も親子のつながりが続くこと
これまで両親の離婚で今世の別れになってしまったケースでも、親子の仲が取り持たれるのが、共同親権の大きなメリットです。
また、単独親権の時と違って、育児を双方の親で分担することになります。
育児の分担によって、児童虐待が減るという声を上げる人もいます。
余りにも酷く惨く言葉がありません。日本の国会議員はこんな児童虐待と人権侵害を放置したままです。離婚後に、実父が共同親権になれば子どもを守れます。婚姻中も離婚後も共同養育・共同親権で子を守る当たり前の国へ‼️💢😠💢 https://t.co/PHNlRUxjrL
— 家族一緒 (@oyakokizuna) February 4, 2020
ですが、両親そろっていても虐待をする親はいますから、単独親権かどうかが問題ではないという意見もあります。
離婚でなくても
児童虐待は婚姻共同親権下の数が統計上では世界的にも一番多いのが現状
その場合は離婚で子どもを守る事もあります。だから海外では単独親権も認めており、その場合
社会サポートと同居養育親とで子育てしています。
両親という理由だけで不適切な環境に子どもを置いて良い訳ではない https://t.co/qt7YMG3euf— ニーナ_足の裏 (@JU8dM2sof3KCqI9) February 13, 2020
共同親権と養育費の問題
すでに共同親権を採用している海外では、共同親権と養育費はどのような関係になっているのか調べてみました。
アメリカの場合は、子供と過ごす時間に反比例して養育費の双方の負担額が減ります。
父親と母親の合意があって、裁判所が容認すれば、どのような養育費にすることも可能である。裁判所が決める場合には、例えば米国では、次のような方法が用いられる[12][13]。(単独親権の場合の養育費は、まず子供が必要とするお金を計算し、それを父親と母親が収入に応じて負担する。もし母親が100%の時間を子供と過ごすのであれば、父親が負担する金額は、全額母親に渡される)。
引用 ウィキペディア 共同親権
日本で選択的共同親権が取り入れられた場合も、子供と過ごす時間と養育費は連動すると思いますが、この仕組みを悪用して養育費を減らすために面会交流を主張する親も出来てくる可能性はあります。
それを防止するための第三者機関の設置が望まれますね。
DV被害やモラハラの問題が横たわる共同親権をどう乗り越えるか?
共同親権に反対している人達がいます。
彼らが共同親権に反対しているのは、DV被害(ドメスティックバイオレンス・家庭内暴力)モラハラ被害(モラルハラスメント・言葉の暴力)から逃れた人達の平穏を脅かすのではないか?という点が気がかりだからです。
その気がかりの根拠として挙がっているのは、DVの支援をしている団体などにヒヤリングをせずに、共同親権を推進しようと維新の会が公約化したという主張があります。
離婚後共同親権は、このように非常に問題のある制度です。慎重に議論を重ねる必要があるでしょう。
にも関わらず、日本維新の会が、こうした制度を公約に掲げたことは、由々しき事態です。
しかも、我々のようなひとり親支援団体、DV被害者支援団体に何らのヒアリングもせずに、公約化してしまいました。
実際に、ヒヤリングをしたのかの点について、維新の会の反論は探せませんでした。
(探せた人はコメント欄で教えて下さい。)
また、DVやモラハラの加害者は加害の自覚がなく、特に、モラハラは言葉の暴力なので身体的な傷が残りません。
モラハラとは、モラル(道徳)による精神的な暴力、嫌がらせのこと。俗語としてモラハラと略すこともある。
引用 ウィキペディア モラルハラスメント
もっと分かりやすくいうと、モラハラとは道徳的な落ち度で相手を執拗に攻め、無視や人格否定をすることです。
例えば、17時に帰るといったのに、17時を過ぎて帰宅した妻(夫)に対して、責任感がない、嘘つきだと責めたり、土下座をするまで許さないなど、行き過ぎた正義感で罰を与えることは、モラハラです。
>>モラハラやドメスティックバイオレンスの怖さ。相談窓口などを記事にしました。
そのほか、DVモラハラ加害者特有の幼児性や共感性の無さも共同親権が反対される理由として挙がります。
加害者の幼児性や共感性の無さが分かる具体的な書き込みを紹介しましょう。
共同親権絶対勝訴!
過去に暴力があったから?怒鳴っていたから?おもちゃとか食器とか投げたから?
さんざん謝っただろ。
子供が怖がっているから月2回母同伴でしか会えない?ふざけるなと思う!
もう謝ってもうしないと言っただろ。信じろよ。許す気持ちないだろ。
単独親権をいいことに好き勝手言うんじゃないよ!
共同親権になったらこんな状況とはオサラバです。
自分も親権者になるんだから何時会いに行っても連れてっても母親は文句は言えなく
なるし子供が怖がったって連れてくこともできる。
毎週金曜の下校時に待ってて連れてっても母親に行っとけば問題なし。
母同伴なんて認めなければいい。
共同親権絶対勝訴!!
怖すぎ・・・・・。
このような加害者の意識がない人も共同親権を推進していると考えると、手放しで賛成と言える問題ではありません。
特に、子供が小さいと、自身の被害を訴えることが難しいため慎重論がでるのも分かります。
その他、児童相談所やDV相談員のレベルが地方自治体によって一律ではないため、モラルハラスメントや児童虐待を保護案件だと認識せずに対応している相談員の存在も問題です。
目黒区の虐待事件の記事の中にも、相談員がモラハラを知らないという報道があります。
「彼の思い通りに謝らないと、許してもらえなかった。どう謝ったらいいのか、答えを見つけるのが大変だったとおっしゃったので、それがまさDVなんだとお話ししました。
そうしたら、『私が最初に女性相談を受けた時、あなたは殴られたり、蹴られたりしていないので、DVではないと言われて、諦めた』とおっしゃった。香川県時代にDVの視点からの支援を受けていなかったことは、とても残念だと思いました」
引用 現代 目黒区「結愛ちゃん」虐待死事件、母・優里が書いた「獄中手記」の中身
その他、児童相談所の人手不足からか、児童相談所の理解しがたい不祥事も起きています。
神戸市中央区東川崎町1の市こども家庭センター(児童相談所)で当直業務を請け負うNPO法人の男性職員が、真夜中に助けを求めて訪れた小学6年の女児に対して「警察に相談しなさい」と伝えて追い返していたことが18日、同センターへの取材で分かった。女児はその後、交番に保護された。
引用 児相 午前三時に女児を追い返す
ただ、児童相談所の機能不全があるから選択的共同親権はできないのは、理由にならないでしょうし、
問題のある親に法律を合わせることで、問題のない親子が会えないのも、また違うと思います。
また、加害者本人も死ぬまでモラハラをしているとは限りません。反省できる人もいます。モラハラ加害者だと気付いた人の手記もあります。参考外部リンク モラハラ考
難しい問題ではありますが諸外国のように選択的共同親権を採用するなら、国がしっかり予算をつけて、児童相談所の機能を立て直し、離婚後の面会交流や共同親権についての相談機関を改めて作る必要があると思います。
また、共同親権を実現するためには、現在の単独親権を持つひとり親の協力が絶対に必要です。
共同親権推進派の人々の中には、DVで逃げるように離婚した人に対して「DVはでっちあげだ!!」と主張する人がいますが、ナンセンス。
確かに、冤罪DVも問題になってますが、DV被害を主張している全ての人が、嘘とは言い難い。
むしろ、なんでそんな風に認知するんだろうって心配になる話。
つまり、共同親権推進派も、DV被害者へのケアの充実やDV被害者の保護、DV加害やモラハラの加害者への更正支援も訴える必要があると思います。
そうすることで、共同親権を選択することもできる土壌が出来上がるのではないでしょうか。
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